個が輝くデジタル学習環境の充実を

 GIGAスクール構想も進み、次期学習指導要領では、子供達のリアルな学びをデジタルが支えるデジタル学習基盤を前提とした教育活動が謳われています。従来の一斉授業の中では、多様な子供たち一人ひとりに向き合う指導が難しかった中で、一人一台端末はそれぞれの習熟度や興味関心に応じた自己調整学習を可能にしました。しかしながら、端末を持ったからすぐにそのような学習に向き合えるわけではありません。デジタル学習環境、とりわけ興味関心や能力に応じたデジタル・リソースの充実とそれを活かす教師の教育技術が不可欠です。国際教育到達度評価学会のTIMSS2023の報告でも、学校で、デジタル・リソースが十分に使える、それらの教材が学習を楽しくしてくれるという項目がありますが、我が国はまだまだ低い評価です。一昨年、教育の情報化を先駆的に進めている台湾の教育省を訪問し、これからの教育についての意見交換をさせていただきましたが、台湾では、小中高等学校デジタル学習精進プロジェクトのもと、小学校1年生から高校3年生までを対象に、「デジタル学習コンテンツの充実」「モバイル端末の提供および無線ネット接続環境の整備」「教育関連ビッグデータの収集・分析」の3課題を進め、教師の支援と児童生徒の自己調整学習能力と学力の向上を目指しているとのことでした。まさしく、我が国のGIGAスクール構想と同じです。共通の学習プラットフォームの上に60万学習コンテンツが整備され、しかも無料で利用できるとのこと。特に基礎基本的な学習のほとんどがこのプラットフォームを活用しての学習、中には児童生徒の回答に応じてAIが習熟度を判定し、適切なコンテンツへ導くシステムもありました。近い将来、教科書をもとにした知識理解はAI学習システムに置き換わるのではないかという思いを強くしたものです。
 学校の役割は変わらざるを得ないかもしれません。アクティブ・ラーニングに言われるように、学んだ知識や技術をどう活かすか、社会に目を向けた問題解決学習が、学校での中心的な活動になる日が来るのではないかと思います。まさしく探求活動です。探求に関しては、10年ほど前に調査に行ったオーストラリアを思い出します。オーストラリアでは、2014年から、国の新たな3次元カリキュラムの中で、教科として「デザインと技術」「デジタル技術」を導入しました。ここでは、単に技術を教えるのではなく、現代社会を支える技術がSTEAMに代表される様々な教科の基礎知識や技術から作り上げられているということを理解するというコンセプトのもと教科横断的な授業が実施されていました。EをEngineeringではなく、Enterpriseに置き換え、アントレプレナー教育に力を入れている学校もあるようです。
 次期学習指導要領では、次代に求められる情報活用能力の抜本的な向上を目指し、総合的な学習の時間などの改善が検討されているとのことです。活用能力を習得するのは大事ですが、それを活かす問題発見・解決学習の充実が望まれます。
 先生が主体の伝統的な教授法から、児童生徒が主体の構成主義的教授法への転換ですが、だからと言って教えるべきことはしっかり教える。要はバランスです。時に指導者であり、時に学習の伴奏者となって、一緒に課題解決に取り組む、そんな学校の姿です。AI等の新たな技術の教育利用も進みます。しかしながら、AIがどんなに進歩しても、個々の児童生徒の日々の変容を最も把握しているのは先生です。技術と先生の経験値が相まってこそ、誰一人取り残さない教育ができるように思います。
 本会には、教育DXで明日の教育を支援する多くの企業が集っています。最新の教育コンテンツや技術の教育利用、授業実践などに関する普及啓発セミナーを全国各地で展開しています。これからも、児童生徒の興味関心を引き出し、伴走者となって共に学ぶ先生、研究者、教育委員会、教育DXを進める文部科学省はじめ関係省庁の皆さんとともに、次代の学びを支えるデジタル学習環境の充実とその普及に、より一層取り組んでいきたいと思います。

一般社団法人 日本教育情報化振興会
(JAPET&CEC)
会長  山西 潤一
2026年1月吉日