教育のデジタル・トランスフォーメーションを皆さんと共に

 GIGAスクール構想の実現で、新たな教育のパラダイムシフトが始まった。令和の学びのスタンダードとして、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、子供たち一人一人に公正に個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育ICT環境の実現が図られることになったことは嬉しい限りです。一人一台端末について、不安を持つ教師も多いのですが、私としては、ようやくコンピュータが真に子どもたちの学習の道具として活用される時代がきたという思いです。ご存じの方もおられると思いますが、アップルの創業者であるステーブ・ジョブスは、彼が手掛けたコンピュータMacを「知の自転車:Bicycle for the Mind」と名付けました。人間は自転車を使うと、自分のエネルギーだけでどこまででも走ることができます。自転車は人間にとってその能力を拡張する道具だというのです。そしてコンピュータは、まさにこの自転車のように、学習の道具としては勿論のこと一人ひとりの個性を伸ばす知を拡張する道具であるべきとの強い思いがあったのです。コンピュータが学校教育へ持ち込まれた当初から、近い将来、子どもたちがコンピュータをランドセルに入れて学校へ通う時代が来ると考えられていました。いつでもどこでも知の自転車を乗りこなす、今ようやくその時代が来たのです。
 しかしながら、多くの先生からは、ICTの教育利用でも難しいのに、一人一台端末なんて、どう活用すればいいのという質問をよく受けます。でも、こんな時、難しいことを考えなくてもいい、アナログなノートをデジタルなノートに置き換えて見たらどうですかと答えています。文字だけでなく、図や式で子供たちに意見や考えを書かせる場面はたくさんあります。教師は従来のノートと同じ意識で指導すればいいのです。ノートをどう活用するかで悩む教師はいないのでは。子供たちにとってタブレットはデジタルなノートなのです。また、拡大、共有、編集等のデジタル機能を使えば、教師の教授活動も今まで以上にやりやすくなるでしょう。互いの理解を深める協同学習の支援ツールとしても役立つのです。ICTは道具です。ICTで学力が上がるのではなく、教師の指導力が重要です。教育技術力が世界トップクラスの日本です。ICT環境整備が整った今こそ、学習の道具としての日常的ICT利活用でもトップを目指したいものです。
 授業や学習の方法のみならず。オンライン化で学校のあり方そのものも大きな変革の時代です。知識や技術を学ぶ場は学校だけではありません。ネットの上には素晴らしい教材が溢れています。勿論ネットの上の情報には、怪しいものもたくさんあるのも事実です。これまで以上に、情報を見抜く目、情報セキュリティ、情報モラルなどのネットリテラシー教育が重要です。OECD2030によれば、自らの学びを自ら考え行動する、ラーニングコンパスを自在に操る主体的な子どもの育成が求められています。また、一人ひとりの学習履歴管理で個性にあった個別最適化の学習につなげたり、ビッグデータによって学級・学校のマネージメント、地域の教育課題も明らかになる可能性があります。
 改革への取り組みは始まったばかりです。GIGAが求めるグローバルなイノベーションで、教育の未来を拓くべく、今後、益々この環境を活かす教材コンテンツの開発、先生がこの環境を活かし、新たな教育方法を習得するための教員研修、新しい学校の在り方を探る調査研究など、やるべき課題もまだまだ多くあります。可能性を現実にするために、会員企業はもとより、志ある皆さんとともに新しいデジタル社会にふさわしい教育のデジタル・トランスフォーメーションを進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

山西 潤一(やまにし じゅんいち)
日本教育情報化振興会 会長
2021年10月吉日