GIGAスクール構想について

(サンプル文章)

GIGA スクール構想

 2019(令和元)年12 月、文部科学省から「GIGAスクール構想」が発表されました。これは、学校で、児童生徒が1人1台の学習者用パソコン(以
下PC)を自由に活用できる環境を整備しようというものでした。当初は4年間をかけて段階的に整備を進める計画でしたが、2020(令和2)年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、全国の公立小中学校が休校になると、ICT を活用した学習の必要性が社会全体で広く認められ、2020 年度1年間で、ほぼ全ての公立小中学校で、全児童生徒分のPC(タブレットPC やノート型PC 等)の整備が進められることとなりました。
 本ハンドブックの第4章「ICT 環境整備の現状」にも、2021 年7月現在で96.1% の自治体で整備済みと報告されています。この冊子を読まれている小中学校関係者の皆さまは、すでにご自分の職場でGIGA スクールの環境整備が終わっている、という方がほとんどであることと思います。中には、過去長い間ICT の整備が進んでいなかったのに、急にたくさんのPC が導入され、児童生徒にどう使わせたらよいか悩んでいる、という地域も多いのではないでしょうか。

 このハンドブックは、教育の情報化全般について、わかりやすくご説明するために毎年発行しているものですが、全国でGIGA スクールの整備が行われたところですので、まず最初にこれに関するお話から始めます。

GIGA スクール構想の背景とねらい

 GIGA スクール構想は、どのような背景から何をねらいとして立てられたものなのでしょうか。
 2017、2018(平成29、30)年度に改訂された新しい学習指導要領では、「情報活用能力(情報モラル含む)」が言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」の一つとされ、重要な位置付けが与えられています。また、情報活用能力を育成するには、「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」が必要と記載されています。GIGA スクール構想は、このような最新の学習指導要領の記述に対応する施策なのです。では、学習指導要領でこのように大きく情報活用能力の育成が取り上げられているのはなぜなのでしょうか。
 それは、現在の社会で起こっている情報技術の進化と社会の劇的な変化に関係しています。情報技術は日々飛躍的に進歩し、ほんの数年前まで人間が行っていた単純な事務作業などが、どんどん不要になってきています。その一方、過去20 年間の賃金水準の推移を比べると、欧米や韓国などが着実に上がっているのに比べて、日本だけはほとんど上がっていません。その原因は、日本において情報技術人材が十分育っておらず、効率の悪い働き方が改善されていないことと関係していると考えられています。これからの社会で働くには、情報技術についての基本的な理解を持ったうえで、さまざまの問題に取り組んでいかねばならず、そのような人を育てるためにはICT 環境の活用と情報活用能力の育成が必須であると考えられているのです。
 しかし、経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA)や国際教員指導環境調査(TALIS)などの調査結果では、日本の学校教育におけるICT 活用の状況は諸外国中GIGA スクール構想による環境整備図表1-1 1週間のうち、教室の授業でデジタル機器を使う時間の国際比較(国語の授業・2018 年)OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2018 年調査補足資料(国立教育政策研究所)より作成。図表1-2 従来のパソコン利用(左)とクラウド活用(右)最低で、大きく後れを取っています(図表1-1)。すでにPISA の調査方法自体がコンピュータ端末から回答するもの(CBT:Computer BasedTesting)となっており、海外では中学生がコンピュータの基本的操作をできることは当たり前と考えられているのです。さらに、2022(令和4)年に予定されている次のPISA からは、プログラミング的思考を問う試験科目が新たに加わることも公表されています。このように、海外ではICTが学習の道具としてごく普通に活用されているのに比べて、日本ではICT はゲームやチャットな
どの娯楽・余暇の道具とみなされ、学校ではあまり活用されていませんでした。
 このような背景から、学習指導要領において情報活用能力の重要性が強調され、またGIGA スクール構想が進められることとなったのです。特にGIGA スクール構想は、児童生徒に1人1台の学習者用PC を与えることで、「いつでもどこでもインターネットにつなぎ、調べ学び考え対話する知的な活動を行う」ことをねらいとしています。これまで紙で行われていた全国学力・学習状況調査も、数年先にはCBT 方式に変わることが想定されています。