GIGAは新たな教育へのパラダイムシフト

 

 新型コロナの感染拡大が収まるかと思いきや、新たな変異株オミクロンが世界に拡大、心配な状況が続いています。そんななかでも、未来ある児童生徒の教育の質を低下させるわけには行きません。GIGA スクール構想で1 人1 台端末や高速大容量の環境整備は整いました。いよいよ本格的に新たな教育へのパラダイムシフトを加速させる段階です。
 学習指導要領が求める学習の基盤となる資質・能力としての言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力をどう育てるか、従来のICT 利活用の延長線ではありません。OECD Education 2030 に示されるエージェンシー「変化をもたらすために、自分で目標を定め、振り返り、責任ある行動を行う能力」を育てる教育をどのように行うかです。アクティブ・ラーニングに謳われる「主体的で、対話的で深い学び」にもつながり、もはや学校だけが学びの場ではありません。家庭、地域など、いつでもどこでも誰とでも、いわゆるユビキタスな学習環境のもとで学べる時代が始まります。
 OECD のいうラーニングコンパスをもって、自らの学びを自らが主体的に舵取りする能力、それが次代を担う児童生徒の資質・能力になるといわれています。GIGA スクールの1 人1 台端末や、高速大容量のネットワーク環境はそのためのインフラです。自らの学びを自らが主体的に舵取りするといっても、教師の指導は重要です。単に知識や技術の習得のための学習なら、今頃、YouTube などの関連サイトによく分かる教材動画が山のように溢れています。教師の役割も変わらざるを得ません。何のために学ぶのか、学習の目当てや手立ての指導、学んだ成果を社会にどう活かすか、インプットだけの学習ではなく、アウトカムが求められます。個々の教科の学びをもとに、教科横断的な問題発見・解決学習をどう仕組むか、教師の力量が問われるところです。
 コロナ問題が起こる前に訪問したフィンランドでは、問題発見・解決学習(Problem based Learning)として現象ベース学習(Phenomenon-based learning)が盛んに取り入れられていました。個々の教科で学んだ知識のみならず、ネットで様々な情報を調べ、協働でレポートにまとめ、関係機関に提言するという社会課題の解決に直結するような学習でした。子ども達がいきいきと取り組んでいた様子が忘れられません。分からない、学んでいないことは自ら調べる、専門家に問い合わせるなど、そのまま社会で通用する活動が見て取れました。STEAM教育やプログラミング教育といった問題発見・解決学習につながる教育が、ますます盛んになってくると思われます。同じく訪れたエストニアでは、プログラミング学習で習得した知識や技術を社会の課題解決に役立てるアントレプレナー教育につなげています。オーストラリアでは、STEAM のE をEnterprise と置き換え、学習の成果を製品として企業に売り込む意欲ある子ども達を育てる学校もありました。
 教育の情報化は先進諸外国に比べ遅れています。デジタル庁ができ、遅れている日本のDX が進むことを期待したいと思います。GIGAスクール構想は単なるICT 利活用の推進ではなく、教育そのもののあり方を考え、変革していく入り口になって欲しいと期待しています。この変革を現実のものとするため、会員企業はもとより、志ある皆さんとともに、次代を担う子どもたちのため、教育のデジタル・トランスフォーメーションを進めていきたいと思います。

山西 潤一(やまにし じゅんいち)
日本教育情報化振興会 会長
2023年3月吉日