1.調査研究のねらいと活動の概要

 新学習指導要領の総則には「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え」と書かれている。この「必要な環境を整え」との記述に従えば、各学校の状況に応じたICT環境の整備を適切に行なう必要がある。

 なぜなら、新学習指導要領においては、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力とされているため、児童生徒が日常的にICTを活用する環境が各学校に整備されていることが前提となるからである。各自治体には、それぞれ直接管轄する学校のICT環境を整備する責任と義務があり、国が示す整備指針等を踏まえつつ、ICT環境整備に取り組む必要がある。このような自治体の責務に加え、全国のすべての小中学生が1人1台のPCやタブレット端末を使う環境を整えようと、政府の「GIGAスクール構想」も動き始め、2020年度中にほとんどの小中学校でPCの整備がほぼ完了した。

 これらの背景により、当プロジェクトは「学校のICT環境整備促進に関する調査研究プロジェクト」というテーマで、「GIGAスクール構想」によるICT環境の整備の状況を観察し、子どもたちの学びにどのような効果が期待できて、どんな課題があるかについて議論を行った。
 「GIGAスクール構想」により整備されたPCを早速、授業や学級活動に活用している学校がある一方で、PCは納品されたものの、様々な理由により使われないで置かれたままの学校もあるようである。ここ10年間のICT活用教育により、地盤ができている自治体はすぐに1人1台PCの活用ができている。しかし、そうでないところは、ICT環境をどのように活用してどんな教育を実現するのかといったグランドデザインを明確にした上で、教員に指導・支援していかねば、PCがただの文鎮となってしまう。このように、アフター「GIGAスクール構想」の学校現場での活用の促進やICT利用の定着についても議論を重ね、会員各社のソリューション提案に反映していった。

今年度は29名の委員の参加があり、以下のとおり活動を行った。

  • 第1回 令和3年4月23日(金) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第2回 令和3年5月25日(金) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第3回 令和3年6月24日(木) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第4回 令和3年7月20日(火) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第5回 令和3年9月28日(火) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第6回 令和3年10月28日(木) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第7回 令和3年11月18日(木) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第8回 令和3年12月10日(金) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第9回 令和4年2月25日(金) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議
  • 第10回 令和4年3月17日(木) 日本教育情報化振興会 会議室+Zoom会議

第1回第3プロジェクト会議

第8回第3プロジェクト会議

2.活動報告

(1)各社の取り組み(提案)の紹介

目的:会員各社の取組みを知ることで、自社と異なる知識を習得でき、提案の幅を広げる

各社のソリューションや顧客事例の紹介を行った。

  • 4/23(金)  (株)内田洋行
  • 10/28(木)  (株)帝国書院
  • 11/18(木)   (株)バッファロー

(2)令和時代の学びの環境整備から活用に関する調査研究活動

 各自治体がそれぞれ直接管轄する学校のICT環境を整備する責任と義務があり、国が示す整備指針等を踏まえつつ、ICT環境整備に取り組む必要があることは、前段でも述べたが、現実的には自治体間にかなりの格差があり、これが大きな問題となっていた。これは、自治体の予算をにぎっている首長部局や財政部局は、学校のICT環境整備に対して理解がないためであり、また教育委員会がその必要性を十分に説明できていないことが原因となっていた。

 その後、政府の「GIGAスクール構想」が動き始め、2020年度中にほとんどの小中学校でPCの整備がほぼ完了した。本プロジェクトでは、「GIGAスクール構想」により、PCの整備完了後に発生した問題を解決するために、企業側でどのようなことができるのかについて、議論を重ねていった。こうして企業側の立場で学校現場や教育委員会のICT整備活用担当者に向けて、会員各社で課題解決案を提案し、よりよい学習環境に向けて実践していった、

(3)有識者を招待し、意見交換会・座談会

■ 佐賀未来塾ICT活用教育研究所代表(佐賀県元副教育長・武雄市元ICT教育監) 福田 孝義 様 [6/24(木)]

【テーマ】主役は、次世代に生きる子供たち ~GIGAスクール構想の加速化と令和の日本型教育の実現~

1) 教育行政の果たすべき役割
・教育行政の視点でのICT活用事業の継続、推進のカギとなる施策決定と予算化

2) 関係者の理解促進に不可欠な時代背景の理解
・合意形成の第一歩
・教育改革の背景としての社会経済環境の変化(動き)を理解する

3) 過去に学び、未来に向けて今を生きる
・GIGAスクール構想に至るICT活用教育関連の諸施策

4) 教師・学習者の期待を自信につなげる確かな成果の積み重ね
・デジタルとアナログのBest-Mixで、「変化」に備え、乗り越える
・GIGAスクール構想が目指す学びのDX
・1人1台端末・高速大容量ネットワークが広げる学びの可能性
・GIGAスクール構想で表出したICT活用教育の危うさ、課題克服のポイント
・教職員研修の基本はOJTと的確な外部支援
・カギは1人1台の情報端末の活用、期待と不安が錯綜、導入目的の明確化と実践が必要

5) GIGAスクール構想の加速化に向けた現場支援のお願い
・GIGAスクールの動きの加速化・進化には、外部からの学校支援が不可欠県

■神奈川県立川崎北高等学校 校長 (元神奈川県教育委員会 教育局総務室 ICT推進担当課長) 柴田 功 様 [12/10(金)]

【テーマ】教育現場の教員の視点から情報教育の実践

1) 経歴

2) 神奈川県のICT整備環境

3) 神奈川県立高校のネットワークの整備

4) 高校における1人1台端末を実現する方法の整理

5) 令和2年4月奇跡の1ケ月

6) 1人1台端末整備目的とそれによる恩恵の整理

7) 高校における1人1台端末が必要な学習活動の整理

8) GIGAスクール環境での学習活動例

9) GIGAスクール構想推進のカギプロフィール紹介

■ 聖心女子大学 非常勤講師 (元東京女子体育大学 准教授)    榎本 竜二 様 [2/25(金)]

【テーマ】令和時代の情報教育

1) 時代背景、最近の子どもの傾向
・読み進めたり、読み解いたりできない
・見慣れたものだけを見続けたい
・新たにできるようになることに興味はない

2) 情報機器は多くの人にとっては
・人のできることを「より良くできる」ようにする
・人のできないことを「できる」ようにする

3) 情報機器は先生にとっては増幅
・授業の上手な先生の能力を拡大する
・授業のヘタな先生の問題を露呈する

4) 教員の「わかる授業」「集中できる授業」実現のため

5) 子どもたちの「自発的な学び」「学び合い」実現のため

6) 意識の転換

7) 電子黒板と黒板の違いとどう使うか

8) PC1人1台持ってしまったら・・

9) 調べていない「調べ学習」

10) 「理解する」ということは「知る(暗記)」ということだけではない

11) 学習者用デジタル教科書があるべきICT学習スタイル

12) 個別最適化といいながら現時点では

13) 現状のデジタル教材の問題とこれから

14) 失敗しているグル-プ学習・協働学習

15) これからは「子どもたちがしたいことを支援する環境」が必要

16) オンライン授業と言っても

17) オンライン授業はイベントではない
・よりわかる授業、確かな学びにつなげることが必要

18) 情報モラル
・皆がもつことで全児童・生徒の問題となった

19) ICT社会での常識や必須行動

20) 日常指導や教科指導の一部分が情報モラル教育に

21) まとめと質疑応答

(4)教育現場・教育委員会への訪問

 沖縄県西原町立西原東小学校訪問(1/26(水))を企画していたが、新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言発令下のなか、西原町教育委員会との話し合いの結果、残念ながら中止となった。

第3プロジェクトの皆さん(オンライン会議)