はじめに
2019年から続く新型コロナウイルスの蔓延は、拡大と収束の波がありつつも、2021年時点の部会活動においても引き続き渡航を断念せざるを得ない状況であった。したがって、2019年にエストニアとフィンランドを訪問して以降、海外調査部会としての現地視察は実施していないことになる。
このような状況を考慮し、2020年から海外オンライン視察ツアーを検討してきたが、2021年に初めてオンラインでフィンランドを訪問することができた。2019年に同国を訪問した際にお世話になったコーディネーターの方々にご協力をいただき、コロナ禍のフィンランドの学校での授業の工夫や教員研修など、ICTをどのように活用して子どもや教員の学びを豊かにしているかに着目したレポートを、バーチャルツアーという形で報告していただいた。
今回のセミナーは幅広く告知をしたこともあり、JAPET&CEC、ICT CONNECT21の会員のほか、現役の教員や教育行政の方など、100名を越える方にご参加いただき、「1度の企画で終えるのはもったいない」というお言葉をいただける結果となった。この企画で得られた参加者の反応や回収したアンケートを参考に、次年度も多くの方に関心を寄せていただけるような企画につなげていきたい。
海外調査部会の2021年度の活動内容
1.海外調査部会 主な活動
2.イベント開催概要
ここからは、イベントの内容を抜粋して紹介する。
■開催日時 2021年11月13日(土)19:00~21:00
■主催 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)/ICT CONNECT21
■対象者 JAPET&CEC会員、ICT CONNECT 21会員、教育委員会・学校関係者
■参加人数 100名超
■プログラム
・フィンランド/ヘルシンキの紹介/中央図書館
・クォッパヌンミ総合学校のバーチャル訪問
・コロナ禍でのICT活用による学びの継続について
・フィンランドとの質疑応答
フィンランド街歩き
イベントの冒頭では、2019年のエストニア・フィンランドツアーを手配してくださったエコ・コンシャスジャパン代表の戸沼如恵さんの案内のもと、フィンランドの街のバーチャルツアー
を行った。ヘルシンキ中央図書館の訪問を通して、フィンランド教育の根本に根付く「生涯を通して学び続ける」文化をご紹介いただいた。
コロナ禍におけるフィンランドの学校教育
街歩きツアーの後は、現地在住コーディネーターであるヒルトゥネン久美子さんから、フィンランドの教育行政全般についての解説を交えながら、コロナ禍での取材を許可していただいたクオッパヌンミ総合学校(小中一貫学校)の様子を、動画や画像を交えながら紹介していただいた。
新型コロナの感染状況が悪化した2020年3月時点では、フィンランド政府は全ての学校教育をオンラインに切り替え、その僅か3日後には全ての学校でそれが実施された。このような素早い対応を可能にした背景として、教育改革を通して各学校・教員に大きな裁量が預けられたことや、「やりながら学ぶ」考え方が根付いていること、さらには日ごろから子ども達が自律的な学習を行っていることなどが取り上げられた。実務的な面では、校務支援システムである「Wilma」(ヴィルマ)が紹介され、参加者の関心を集めた。
現地の先生へのオンラインインタビュー
イベントの後半では、今回の取材先であるクオッパヌンミ総合学校で国語を担当しているピリヨ・レバニエミ先生への質疑応答が行われた。その中で、日本とは大きく異なる授業設計や時間割の組み立て方、仕事の合間で教員研修が受けられる環境の工夫や、教科の枠を越えたフィンランド独特の総合的な学習、自己肯定感を育てる日々の声掛けや学習環境の工夫など、様々な角度からの視聴者からの質問にお答えいただいた。
今年度の活動方針
今回のオンラインツアー後の参加者アンケートからは、フィンランド教育の根幹にある「自分らしく学ぶ」という考え方や、その姿勢が色濃く出ている幼児教育への関心が高いことがわかった。したがって、海外調査部会としては実際の海外視察ツアーの復活を視野に入れつつ、今回のオンライン視察ツアーで紹介したフィンランドの学校レポートをさらに深掘りした形で、今後は続編となる第二弾オンラインツアーを開催したいと考えている。
2022年5月現在、少しずつ海外渡航の制限が緩和されつつあるものの、従前通りの渡航が可能となる見通しはまだ立っていない。しばらくこの状況は続くと考えられるが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、試行錯誤の末に見えてきた世界の新しい教育の形と、変わらない教育の在り方を、これからも海外調査部会として発信していきたいと考えている。